2013年5月30日木曜日

あるウイグル人大学生の「チャイニーズドリーム」



(ウイグルオンラインより)

作者:Uyghuray

 私は卒業間近の大学生、ウイグル人です。最近「チャイニーズドリーム」の話題がホットで、みんなが自分の「チャイニーズドリーム」を語っています。しかし、私の「チャイニーズドリーム」は他の大部分の人のように壮大ではありません。なぜなら、私は中華民族の偉大な復興とか豊かな社会の全面建設のことは語らず、自分と今のウイグル人大学生に密接に関係する二つの重要問題、パスポートと就職について語るからです。

 2013年習主席が就任してから、多くの会議で「チャイニーズドリーム」--中華民族の偉大な復興--を語り、そのため「チャイニーズドリーム」は中国のホットな話題になっています。私もこの夢が好きですが、この夢は大きすぎるし、だれもが自分の夢を持ってその夢の実現に努力しています。つまり私たちは国家の大きな夢を個人の小さな夢に変換して、「チャイニーズドリーム」で現実を照らしているのです。

 ウイグル人として、私の「チャイニーズドリーム」はもっと大きく、もっと広い方がいいかもしれません。私は少数民族の権利、少数民族の宗教、文化、言語、および少数民族の未来などの大問題を語ることもできます。しかし、卒業間近の大学生として、私は一人のウイグル人大学生としての「チャイニーズドリーム」に対する期待を語りたいと思います。

 三年生になると、大学生は様々な選択に直面します。外国留学するか? 大学院に進学するか? 公務員試験を受けるか? あるいは故郷に帰って他の仕事を探すか?

 中国内地で学んでいるウイグル人大学生も同様にこの選択に直面します。ある人は外国に留学することを夢見、ある人は大学院に進んで内地にとどまろうと思い、ある人は公務員試験を受けて故郷に戻って安定した仕事に就きたいと思い……いずれにせよ、私たちはある共通の「チャイニーズドリーム」を持っています。それはより良い未来を得るということです。

 しかし、多くの要因が私たちの夢の実現を阻み、さらには夢を持つことを阻んでいます。これから私は、何が私たちの夢の実現を阻んでいるのかについて話します。

 パスポートはウイグル人大学生の留学の夢を阻む最大の問題です。中華人民共和国パスポート法第二条は「いかなる組織もしくは個人もパスポートを偽造、変造、譲渡、故意に毀損もしくは違法に押収してはならない」と定め、第六条は「公安機関出入国管理当局は申請書類受領の日から起算して15日以内に普通パスポートを公布しなければならない」、「国民が合理的かつ緊急の事由で急いで手続するよう申請したときは、公安機関出入国管理当局は速やかに手続しなければならない」と定めています。

 これらの法律や条例が保障しているのに反し、ウイグル人のパスポート手続きには特殊な規定と手続きがあります。パスポート法にはそのような規定がないのに、ウイグル人が内地でパスポートを申請するときはたとえ戸籍が内地の都市に移っていても、申請書類を原籍地に送って審査します。そして原籍地当局の書類審査過程が非常に複雑で、申請者の家に行って出国原因と目的を尋問し、家族の中に犯罪にかかわったことのある者がいないかを調査し、もしいれば一律に不受理とします。当局はまたさまざまな口実をつけて手続を拒絶しており、その過程での袖の下の要求状況についてはここではあえて話しません。これらの審査手続によってウイグル人は期限までにパスポートを手にすることができず、数か月、さらには何年も待たされることになり、手続成功率は非常に低くなっています。しかも、うまくパスポートを入手できても、新疆の現地の警察に「代替保管」の名目で没収されます。

 私もパスポート申請を拒絶された大学生の一人です。二年前に北京(私の戸籍は北京)でパスポートを申請しましたが、いまだに入手できません。新疆の警察が手続しない理由は私が「政治不合格〔思想が共産党の気に入らないということ〕」だからだそうです。しかし、北京側の私への回答は「引き続き通知を待て」です。私のある友人は1年後にやっとパスポートを受け取り、もう一人はパスポートは入手しましたが、現地当局に「国外と関係がある」という理由で「ブラックリスト」に載せられてしまいました。もう一人の、エリヌルという名のウイグル人の娘はパスポート申請を拒絶されましたが、当局の回答は「君の20年前に亡くなった母親の記録がシステムに記録されていないから、君のパスポート申請は受理できない」というものでした。

 上と同じような例は数えきれません。パスポートは現地当局の違法行為により大学生を含めて、全てのウイグル人にとって贅沢品になってしまっています。パスポートは中華人民共和国国民の出入国と外国における国籍と身分を証明する証明書です。外国留学は大多数のウイグル人大学生の夢であり、視野を広げ、知識を豊かにする良い機会です。しかし、パスポートがなくて私たちはどうやって留学の夢を持てばいいのでしょう?

 新疆では、国家機関、公営団体などの募集規定の中のウイグル人など少数民族に対する差別的制限がウイグル人大学生の就職難の最大の原因になっています。

 労働力市場管理規定第十一条は「雇用主が従業員を募集する際は、国家が定める従事に適さない職種もしくはポストの他は、性別、民族、種族、宗教を理由に採用を拒否したり採用基準を引き上げたりしてはならない」と定められています。李克強総理は今年515日の国務院常務会議で、募集過程での民族差別を厳禁すると語っています。

 しかし、新疆ウイグル自治区では、事業者の募集過程で各種の少数民族差別現象が依然としてあります。例えば、ウイグル自治区人事試験センターが最近公布した「2013年新疆ウイグル自治区公務員、従業員公開募集職位表」では、多くのポストで対象民族を漢人に限定し、ウイグル人に限定して募集するポストはごくわずかです。今年ウイグル自治区は公務員、従業員を合計で7,757募集しましたが、その内ウイグル人限定募集ポストは916件、漢人限定募集ポストは2,507件、民族を問わないポストは2,771件、ウイグル人枠は全体のわずか11.8%です。新疆の少数民族人口は総人口の59.9%、内ウイグル人は45.84%なのにです。

 このほかに、2012年の公務員募集にも民族制限規定がありました。例えば、新疆ウイグル自治区関係官庁の公務員、従業員ポスト表では、募集人数169名、民族を限定しない枠78名、ウイグル人枠7名、漢人枠50名、少数民族枠26名、ウイグルもしくはカザフ人枠8名でした。同年、ケリヤ県高級中学は教師を36名募集しましたが、ポストの民族指定は全て「漢」となっていました。〔ケリヤの住民はほとんどウイグル人〕

 これらの民族制限について、当局のウエイボーでも反応はありますが、改善の気配は見られません。特に、今年の公務員の民族限定規定は、ウイグル人など少数民族の不満を招き、とりわけ大学生はこれに怒って、続々とウエイボー、人人ネット、ウィーチャットなどのSNSで意見を表明し、公務員試験ポスト表にはひどい民族的偏向と性差別があると訴えています。

 あるシナコムのウエイボーユーザーはこう書いています。「優遇はいらない、特殊な配慮はいらない、ただ公平な競争が欲しいんだ。多くの人が長く待った機会が始まる前に民族の違いと性差別で圧殺されるのは、国と共産党の「人民に奉仕する」というスローガンに完全に反している。漢人であれ、ウイグル人であれ、またカザフ人であれ、私たちはみな中国人なのだから、この国は漢人のものであるだけでなく、他の55の少数民族のものでもあるのだから、チャイニーズドリームを実現したければ、まず全ての中国人に民族や性別にかかわりなく夢を追求する機会を与えるべきだ」。

 新疆ウイグル自治区では、人材募集での差別現象は頻発しています。そして少数民族大学生の就職率は非常に低いです。「雪蓮花開公益起業プロジェクト」の10年のある報告によると、新疆の少数民族大学生の一次就職率はわずか20%ほどでした。また、ウルムチ市のある大学の2009年少数民族大学生就職率は24.24%でした。一方、漢人の学部卒業生の就職率は94.24%です。

 この状況を見れば、ウイグル人大学生は平等な就職の機会を与えられていません。それなのにどうやって私たちは自身の未来に希望が持てるでしょう?

 話を戻すと、「チャイニーズドリーム」は人によって違った意味を持ち、「チャイニーズドリーム」に対する期待も違います。私の「チャイニーズドリーム」に対する期待は多くありません。私や私のような大学生が笑って将来を考えられることです。パスポート申請の時に内地住民と同じ待遇を受け、権利が法律で保障されることです。人材募集の中の民族差別が撤廃され、平等な就職の機会を得られることです。

 そして、私個人の「チャイニーズドリーム」はとても具体的で、パスポートが円滑に入手できて、留学の夢が実現することです。

2013-5-21

出典:ウイグルオンライン
〔 〕内は訳注

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